京都1975 -2ページ目

あきひで


現時点で京都で一番美味いと、大仰ではなく素直に思えるラーメン。こってり風味の極北ながらも、短絡的で合理的な後付けのくどさはなく、あくまでもスタンスは実直、それも、ほぼ「愚直」の域に達しそうな実直さ。骨だけをただひたすらに煮込んだスープ。舌の柔突起の上を、微細な骨の粒子がさらさらっとかすめていく、この感触、この名状し難い異物感。舌で味わい、鼻で嗅ぎ、脳味噌に刻まれるこの確固たる存在感は、誤解を恐れずに言えば、既に唯我独尊の、ひとつのアートだ。のちに登場した割節ラーメンは、魚系のダシが追加された新機軸。世に蔓延る「Wスープ」なる低俗で恣意的な表現を駆逐するぐらいの、実直な「和」がここにある。しみじみ、でもがっつり美味い。こいつは和食だ、日本だ、うーん、イッツ・ジャポーン。不定休という点が「あきひで」の唯一のウィークポイント。かくいう私も何度もフラれた。意気揚々と一乗寺へ赴き、店の前で茫然自失で立ち尽くしたあの日。何度もフラれた結果、休店の場合を想定して「高安」「鶴はし」「夢を語れ」等、別候補を想定しつつの一乗寺行脚。しかし世はネット。灯台もと暗し。営業情報を掲載する公式サイトの存在に気付くのが遅すぎた。でも、今でもそれは敢えて見ない。これからも実直にいく。意固地とはまた違う。営業日にたまたま出会えた僥倖、その高揚を大切にしたいから。愚直だな、いやいや、これは馬鹿以外の何者でもない。

らーめんや亜喜英 (あきひで) (ラーメン / 一乗寺)
★★★★★ 5.0

丸ぎゅ


大局的な視野でいくと「こってり」「あっさり」という二元論で語られるラーメン。特に「こってり」については、その言葉が内包する意味合いがとてつもなく広範で、もちろん食べる人によってもそのニュアンスは十人十色。ラーメン紹介本によく見受けられるダイヤグラムを見てみても「え?このラーメンってこってりだったんだ!」なんて違和感を覚えてしまうこともしばしば。はたまた京都のご当地ラーメンの一つと言っていい背脂醤油ラーメンを評する際の常套句「見た目はこってり、食べてみると意外にあっさり」なんてのもいい加減食傷気味な表現。こんな感じで、目の前にあるラーメンの味を表現するためのボキャブラリーって、実はかくも貧困。「丸ぎゅ」のラーメン、こいつはこういう文脈でいくと、とりあえず「こってり」と表現して間違いなさそう。だけど、どぎつい「こってり」の系統ではなく、まろやかでまとまりがある、優しい風味。なんというか、「こってり」というよりは「まったり」なラーメン。茶褐色の濁ったスープは、表面に背脂がわずかに浮かび、やや粉っぽい舌触りが特徴的。「まったり」なのは逆に言うとパンチがなくて、食べ進めるに連れて舌が慣れ、中だるみの状態になってしまうんだけど、ニラ、キムチ、一味唐辛子、おろしニンニクがセッティングされていて、順に加えることによって味に飽きが来ない。白眉はキムチで、いわゆる普通のキムチとは違い、臭さや辛さが極力抑えられた、あくまでもトッピング用のキムチとして調合されている点がすばらしい(無論、白ご飯のお供としては役不足)。さらに、おろしニンニクを加えた時点で「まったり」だった風味が一気に飛翔。身も蓋もない表現だけど、無茶苦茶美味いラーメンに昇華する。明るい店主の振る舞いも特徴的。厨房の奥から「ガシャーン!」と皿を落とす音。セオリー通りなら「お騒がせしました!」。が……「今の音は割れてへんな!セーフ!」。この店主あっての「まったり」なラーメン。

丸ぎゅ
★★★★★ 4.5

Obyan Cafe


七条大橋の西詰にそれとなく存在するリバーサイドなカフェ。店の東側は全面ガラス窓になっているので、多少淀み気味ながら鴨川のストリームを眼下に一息つける。南国モチーフらしく、サーフィンでスキューバでアイランドな小物たちがちらほらと見受けられるものの、アクの強い、押しつけ的なオリジナリティーは皆無で、内装はいたってニュートラルな雰囲気。肩肘張ることなく過ごしやすい。タコライス、カレーライス、オムライスとチョイスできるランチは、どれもそつなく美味い。特に、カレーライスの上にのせられたエビフライのサクサク感は秀逸。立地の良さに反してやや不足感のある客入りっぷりが、これまた穴場的でいい感じ。トータルで見て、抜群のロケーションとは裏腹に、内外装、メニューの味付け、客入りといい、確信犯ではない「地味さ」が漂っていて、ハードルはすんごい低い。エリア的にもギリギリ観光客の毒牙にはかからない聖域なので、シャイボーイも「消極的」に活用できる「ゆるいハコ」なのである。

オブジャン カフェ (Obyan Cafe)
★★★★ 4.0

スマイルバーガー 清水寺店


京都のデザイン会社「京都職人気質」(きょうとしょくにんかたぎ)が運営するハンバーガーショップの清水寺店。山科本店と桂坂店がギラギラ眩しいエアストリームで営業するのに対して、清水寺店だけはテナント営業なので、面白みに欠ける反面、イートイン可能という特徴が。「大人のための大人のバーガー」を標榜するだけあって、強気の値段設定。佐世保バーガー、モスの匠バーガーと、この手の高級バーガーの先人は多いけれど、後発組として入念に商品開発された感はある。表面がパリパリで中身はふっくらなバンズには「smile」の焼き印が施されて、注文が入ってから鉄板で焼き始めるミートパティは、厚さ1.5~2cmはあろうかという極太サイズ。結論としては、満腹中枢的にも、クォリティー的にも、値段相応の満足感。プチリッチしたいランチタイムにおあつらえ向き。他の2店舗と違って清水寺付近という観光地。「京都に来たらスマイルバーガー」という店側の目論見は、見ている限り少し厳しそうで、目の前を往来する観光客は物珍しそうに見ながらも実質スルー。ひとつ気になること。イートインの客にもテイクアウトの際と全く同じように、何故だか紙の箱に入れられて、さらにシールで封をされてサーブされる謎。無論、客はテーブルでそのシールの封を切って箱を開け、食べ始めるわけだけど……これってなんかすんごい無駄な気が。喫茶店で普通にケーキを注文したら、テイクアウト用の箱に入れられた状態でサーブされるようなもんで。せっかくのイートインなんだから、付け合わせのポテチ・ピクルス併せておっきなお皿でワンプレートで盛られてきたほうが、食べやすいし、アンチファーストフードの雰囲気も出るし、ひいてはエコにもなるのに……ね。画竜点睛を欠く……かな。

smile burger 清水寺店 (スマイルバーガー)
★★★★ 4.0

鴨川


同志社っ子御用達な今出川ロケーション。「鴨川」なのに鴨川からはわりかし遠いという小さな謎……(放置)。これぞ「グリル」な食いしん坊メニューのサンプルがディスプレイされた店頭のショーケース……その破壊力たるや。ことごとく茶色の肉々しさ。日替わりランチ、そしてA・B・Cランチは、ランチとは名ばかりの終日メニュー。その真ん中ランクのBランチに「当店のおすすめ品」マークが付与されたショーケース は、松竹梅の「竹」を選んでしまうという日本人の傾向を、店側が先読みしたのかどうか(どうでもいい)。少年ジャンプと少年マガジンの、それぞれ5号分までのバックナンバーが完備されていたりと、食前・食後のお楽しみにも抜かりなし。ランチタイムにちょいと出遅れてしまった悲しき腹ペコさんたちの、揺るぎなき駆け込み寺。

グリル鴨川
★★★★ 4.0

大丸ヴィラ

大丸ヴィラ

大丸ヴィラ

さらさ花遊小路


新京極商店街に入って間もなく、東側に現れる小さな、寂れた商店街・花遊小路 に、あのさらさができた。さらさの本拠地とも言える富小路店の移転。「サラサ3 」に続き、パッとしない商店街を敢えてチョイスして、自らの牽引力でなんとかしたろかい!というパイオニア精神と、決して過信には至らない揺るぎなき自信具合がとっても素敵。古きうどん店を改装したという木造の店内は、南窓から日光が差し込む採光の良さといい、高い天井、窮屈さを感じさせないテーブルの配置といい、果たしてあり得ないくらいにお洒落でスペーシーでゆるい空間が広がっている。本棚にさりげなく置かれた、劇画「愛と誠」が、誰にも読まれることなく鎮座しオブジェ化している結果こそが、店側の思惑通りと言えるのかも。ドカ盛りの日替わりランチが育ち盛りのメンズの食欲をも包括し、まるでカフェらしからぬ懐の深さ。個人的には、この流れで是非とも我が左京区の寂れ商店街No.1・プラザ修学院への出店を!……と、妄想してしまう今日この頃。

さらさ花遊小路
★★★★★ 4.5

HYATT REGENCY KYOTO

HYATT REGENCY KYOTO

吉野


三十三間堂の裏っかわ。ほっそ~い路地からむんむん漂うあぶらの香り。眉間にしわを寄せ、ようく目を凝らしてみると、奥のほうにほんのり灯るちっちゃな赤提灯。決して大きくはない店内は、近隣の人たちや観光客でひしめき合い、まさにてんやわんやの大騒ぎ(陳腐表現失礼)。閑静な住宅街で唐突に邂逅する「楽園」の希少性に、思わずモチベーションも上昇。ホルモン×お好み焼き×焼きそばという、決してメインストリームを歩めないB級グルメ界の個性派俳優が揃い踏み。この三者が入り乱れる名物「まんぼ焼き」は、さながら竹内力と哀川翔と白龍の殴り合いのような極濃テイストで失神寸前。シンプルさを志向するならば、あぶらじゅるじゅるで肉の旨みたっぷりのホソ焼きが手堅く美味い。からだ中に染みつくアブラギッシュなスメルを代償に、汗かき酒飲み無心にがっつけ!そしてふと我に返ったとき、あなたもこのカオスの一員であることに気付くのだ。

お好み焼吉野
★★★★★ 4.5

六曜社

六曜社