京都1975 -5ページ目

ゆる音屋

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たつみ


河原町通りの一本西、裏寺町通り。「“ウラ”寺町通り」と読むだけあって、本家・寺町通りとは違う、なんだかアングラな雰囲気を醸し出す(こじつけ)。文字通り寺が多いけど、怪しい風俗店があったり、「印」「MADE IN WORLD」「SOU・SOU」といったおしゃれなショップがあったりと雑多な雰囲気で、ビビッドな感性を持ったヤングメンが往来。そんなエリアの最南端、OPAのちょうど裏っかわに「たつみ」という老舗の居酒屋がある。いわゆる大衆居酒屋。店内は奥がテーブル席、手前が立ち飲みスペースになっていて、数え切れないほどのメニューの札が壁を覆い尽くす。オヤジ臭がぷんぷん漂う、しみったれた雰囲気がたまらない。以前来たときは二人で入店してテーブル席に着座、「なんちゃって」な好奇心を満たすに留まったけど、今はもう違う。齢30歳、アフター5、哀愁のサラリーマン……一人で立ち飲みスペースで飲む権利は得ているはず、と堂々の本気(マジ)入店。店内の角に置かれたテレビでは阪神×巨人戦が放映中。9回同点、ピッチャー・藤川。周りのオヤジたちも固唾を飲んで見入っている。ピンチを三振で切り抜け……「オッシャ!」声を上げると同時に生中をグイッ。肴はこの店の名物「牛スジどて焼き」。いい感じに煮込まれていて、濃い味付け、ビールとの相性は抜群。「はも天」「鳥皮カリカリ揚げ」と小刻みに注文してはビールを飲み続け……結果お会計は\3,000もいかない。安価で至福のひとときを……オヤジ道ここに極まれり。延長の末、試合終了を待たずして野球中継は終了。どうせならこの空間でオヤジたちと阪神勝利の喜びを分かち合いたかった……が、帰ってテレビつけたら阪神サヨナラ負けやて。

たつみ
★★★★★ 4.5

高安(新装開店)


人気・実力共に京都一?あとは裏通りという立地さえなんとかすれば……という状態だった「高安」、満を持して一乗寺メインストリート・東大路通り沿いへと堂々の移転。まるでラーメン店らしからぬカフェライクなポップなセンス溢れる店内。移転前にちょっぴり垣間見えたファンシーさが前面に押し出されて、椅子、テーブル共にいわゆるデザイン家具が揃えられ、さらに大きな液晶テレビに洋物のアニメが流されたりと、なんだかお洒落な空間に様変わり。東大路通りに面する部分は全面ガラス張りになって採光はバッチリ。開かれた、明るい雰囲気のラーメン店になった。店員はヘッドセットを着用。注文をとるときは、ファミレスのようにハンドサイズの端末を所持してピピッと打ち込む。なんてシステマチック!こんな感じで、ラーメン以外の部分に関しては、全く持ってフルモデルチェンジ。で、席数が増えた結果、行列の数も減ったかと思いきやそうでもない。しかもなんだか回転率が悪そうな雰囲気。なんでだろうと店内を覗き込むと…なんと半数以上の客が子連れ!ベビーカーを伴った乳幼児同伴の家族までいる。小さなお椀にラーメンを取り分けてもらい、拙い箸使いでずるずるとすする子どもたち。帰り際、もれなく飴ちゃんを貰えたり、待ち客スペースに馬の乗り物があったりと、こりゃ子どもを連れてきたくなるわというおもてなし。こんな時、ふとダウンタウンの松ちゃんがなんかの番組で言っていた言葉を思い出す。「行列のできるようなラーメン屋に子どもを連れてくんな!」。賛否分かれる部分だと思うけど、とりあえず「高安」の意向はウェルカム・チルドレン。それ以外の人々は我慢する寛容な心が必要也。BGMは相変わらずロック系。しっぽりと上品にクラシックを流す甚だ勘違いなラーメン店が増えてきてるけど、ラーメンは決してそんなもんじゃない。麺がのびる前に如何に早くかき込むか!そういう意味でラーメン店にロックはあながち間違ってない。で、肝心のラーメン自体は相変わらず美味い!ていうか、さらに美味くなってるかも。ラーメンのお供・ご飯に関しては、分量を自由にカスタマイズ可能で、食いしん坊にとっては嬉しい配慮。しかし、調子に乗って大盛りを注文すると、「まんが日本昔話」級の山盛りご飯が登場するので、注文する際はくれぐれも注意されたし。

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中華そば 高安 (たかやす)
★★★★★ 5.0

宮川筋

宮川筋

宮川筋

円山公園

円山公園

鶴はし

鶴はし 個人的に最近ラーメンのヒットがない。例えばWスープ。魚系のスープを合わせたラーメンのことで、遅ればせながら京都でもいくつか食べられる店が登場しつつあるけど、正直個人的にはどれもイマイチ。一口目だけは「おっ!」と思うけど、だんだんくどくなってきてスープを全部飲み干せない。こういった系統は「スガキヤ」だけで十分じゃないか……などと。一乗寺に目を移してみると、最近数店の新規ラーメン店が開店してるけど、特に常連になりそうな店はなし。もうこってり系にも疲れたし……当分ラーメンはもういいか……。「天天有」の少し北に、「鶴はし」というラーメン店がある。一乗寺ラーメンエリアの最北端。開店してずいぶん経つけど、一度も食ったことがなかった。店の前に電光掲示板を設置している店は絶対美味くない!という謎の信念があったから。たまたま目当てのラーメン店が臨時休業で肩すかしを食らったので、その替わりとして初めて入店してみた。もう既に年季が入っているテーブル、イス、床。開店して以来一度も食ったことがなかったので、一人タイムスリップ状態。この店は少し変わっていて、店の前に置かれたホワイトボードに「真鴨」「昆布」などと、その日のスープの材料が掲示されている。またラーメンを作る際、鉢でタレとスープを混ぜ合わせた後、店主が小皿にひとすくいして、一杯一杯テイスティングを行う。元フレンチのシェフという店主ならではのスタンス。スープの材料には徹底的にこだわるし、味のブレも許さない。いわゆる普通のラーメン店では見られない、この店ならではの面白い光景。ラーメンはパッと見、オーソドックスな醤油ラーメン。が、スープを一口すすってみてビックリ。こりゃただもんじゃない。同じ系統でいくと「第一旭」を初めて食ったとき以来の衝撃。ほのかに甘いスープで、様々な旨味が舌の上で交錯。表面にはよくある背脂ではなく、コクのあるラード系の油が浮かび、底にはスライスされたニンニクがわんさかと潜んでいる。あの手この手で工夫されているスープで、相当研究されているな……という印象。また一つ好きなラーメン店ができてよかったと素直に思う。ご夫婦で切り盛りされているこのお店、店舗でありご自宅でもあるようで、この日はたまたま中学生くらいの息子さん+ガールフレンドが店の奥から登場してお出かけ、という光景が……!もー!最近の若い子ったら!ラーメン食いながら複雑な気分になった。

鶴はしラーメン (つるはしらーめん)
★★★★★ 4.5

萬端


焼き鳥を食おうと思ったら「大吉」「一番」などと、チェーン展開してる店がまず候補として頭に浮かぶ。何より身近な存在だし、気軽に入れるし、美味いし。が、ちょっと雰囲気の違う焼き鳥店として「萬端」という店があったりする。河原町二条。河原町も御池を越えると一気に静かになるし、ちょっと穴場的な焼き鳥店。「Le coq」(ルコック)そっくりな△に鶏マークの看板が目印。店内は「あれ?間違った?」と不安になってしまうくらいに焼き鳥店らしさがない。パッと見、ちょっと寂れた田舎の喫茶店風。なんとも陰気で覇気がない。チンした焼き鳥が出てきてもおかしくないような雰囲気。しかし、その実体は相当な実力の持ち主だったりするから面白い。焼き鳥をはじめ、水炊き、とりさし、唐揚げ、親子丼と、おおよそ鶏を使った料理は全てレパートリー。もちもちと柔らかい食感のもも肉の焼き鳥、10時間煮続けるというあったかい鶏スープ、サッと油を通したという香ばしい風味が絶品のじぶ煮。どれも美味くて冷えたビールがよく進む……ラストに丼ものを食って腹一杯!お初のお客さんには、帰り際に帳簿と筆ペンを渡され、連絡先と感想を要求される。言わずもがなその中には私の直筆も。密かにしたためられた「京都1975」の文字……。恥ずかしや。

TORI処 萬端
★★★★ 4.0

韓麺館38


WBC準決勝・日本×韓国。寝坊してしまってプレイボールまで間もない!昼飯時を逃した私は「はせがわ」 へ猛ダッシュ!なんともボリューミーなエビバーグ弁当(エビフライ+ハンバーグ)を持ち帰り、そいつをがっつきながらTV観戦。結果、日本の圧勝で大満足。溜飲を下げたら、惻隠の情というかなんというか、何故だか韓国料理が無性に食べたくなってきた。「韓麺館38」。以前から気にはなっていた店だが、東山に立地し、車でアクセスしにくいイメージがあった。それが最近、丹波口・KRPの真ん前に支店がオープン。あのエリアと言えばバカでかい駐車場もあることだし……てことで、早速晩飯時に食いに行ってきた。韓国料理にはただならぬ思いがある。仕事の関係上、かつて2ヶ月ほどソウルで生活したことがあって、地元の人に紛れながら色んな店を食べ歩いた日々。真っ昼間から焼き肉をがっつく韓国人のバイタリティーはハンパじゃない。しかもニンニク満載の料理。徴兵制以外にも、韓国人がタフな理由はいっぱいある(ヤワな私は毎日下痢ピー)。話は戻って「韓麺館38」。WBCの影響かどうかは知らんけど、わりとキャパシティーのある店内が既に混雑気味。テーブル席につくや否や「あんたらここ来んの初めて?」と店員のおばちゃんの一言。「えー!この店って一見さんお断りー!?」と一瞬焦ったが、実は心優しいおばちゃんで、この店のお勧め料理を教えてくれた。間もなくやってきた片言の店員のお姉さんに、韓国冷麺、プルコギ、ビビンバを注文。「飲み物は?」と聞かれて思わず反射的に「メクチュ!」(ビールの意)と返答……。「うわー!なんちゃって韓国通気取りかー!?恥ずかしー!」と内心赤面したが、素直に「メクチュですね。」と注文を受けてもらった……ふー。出てきた料理は全て満足。イチ押しという韓国冷麺は、これまでいろいろ食べてきたなかでも「手打ち」と言うだけあって弾力感が抜群。細すぎない中太麺で、よくあるゴムのような食感とはちょっと違って、もちもちとした歯ごたえのある絶妙な食感。スープも至極あっさり風味で、濃い味付けのプルコギの口休めに最適。プルコギに関しては、これまで「日本版すき焼き」的なイメージがあったけど、この店のプルコギの肉は立派なカルビで食い応えがあり、いい意味で予想を覆された。「\2,800以上の価値はあるから!」というおばちゃんの言い分に納得。総括として、韓国料理が食いたくなったら、選択肢に入れて間違いのない店。で、駐車場に関しては「スタバ」「かごのや」共用の駐車場に停めることになる。これが実に法外な値段で30分ごとに\800也!(いうても郊外!)しかしこれが提携先のスタバで\260のブレンドコーヒーを飲んだら、2時間分の駐車券が貰えてしまう妙。流石に私はできなかったが、スタバの最安値、\80のロゴチョコレートを購入し、駐車券をゲットしてしまう厚顔無恥な強者の登場を期待してやまない。

Noinah

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じん六


北山のお蕎麦の名店「じん六」。あの「拓朗亭 」のご主人に「良きライバルであり朋友」と言わしめる実力派で「拓朗亭」が代表を務める「唐変木蕎麦之會」の会員店。北山通りから一区画奥まった場所に立地。特に目立つような看板やのぼりを出さず、周りの雰囲気に溶け込むかのように、ごく自然に存在する「じん六」。少し大きな庭に純和風の木造店舗、というか、暖簾が出ていなければ普通の住居っぽい。北山という閑静で自然豊かな環境も相まって、自己主張を極力抑えた、上品で慎ましやかな佇まい。店内はテーブル4つだけというコンパクトなスケール。南向きの店舗で、大きなガラス窓から燦々と日光が差し込む明るい店内。厨房にも同様に日光が差し込み、大きなざるでお蕎麦を湯切りするご主人の後ろ姿がなんだか神々しくも映ったり。「拓朗亭」と同様に「じん六」もそば粉十割の手打ち蕎麦。さらに「じん六」は全国各地の選別した契約農家からそば粉を仕入れ、それぞれの風味に合ったお蕎麦を仕上げるという。そのこだわりたるや恐るべし。店内にはその日に使用しているそば粉の産地が「北海道産」「福井産」「茨城産」などと掲示される。「じん六」のメニューの特徴として、ごく普通のお蕎麦屋さん同様、温蕎麦がちゃんと存在するという点がある。つなぎを入れないそば粉十割のお蕎麦の場合、すぐにのびてしまうという理由から、温蕎麦を極力勧めないというスタンスの代表例が「拓朗亭」(初めて来店した人は温蕎麦を注文するな!という注意書きまで……)。でもお蕎麦と言えばやはり温蕎麦というのは日本人である以上、万人に共通する認識。そういう意味で「じん六」は片意地張らず、よりカジュアルなスタンス。京都のお蕎麦の王道「にしん蕎麦」がメニューにあるのは嬉しい限り。確かにお蕎麦の歯ごたえ、風味はざる蕎麦に劣るものの、それを補って余りあるにしんの魅力。煮汁が染みわたった風味豊かなにしん。口の中でほろほろと崩れ落ち……これがべらぼうに美味い!普通のお蕎麦屋さんに比べると若干お値段は張るものの、一度は食べとけ!的な逸品であることに間違いなし。「じん六」は大晦日限定で持ち帰り用の「年越し蕎麦」を予約注文可能。今年の大晦日は格闘技、紅白を見つつ「じん六」のお蕎麦をすすって年越し予定。寒空の下外出して、どこそこでカウントダウンイベント!なんてアグレッシブなのもいいけど、「じん六」のお蕎麦とともに過ごす、こんなしっぽりとした大晦日もえんんやない?

蕎麦屋 じん六 (そばやじんろく)
★★★★ 4.0