京都1975 -15ページ目
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ルイジアナママ

市内の人間にとって、亀岡という地は、舞鶴方面や他府県へ移動する際の、一つの通過点に過ぎないという認識が強いと思う。それは裏返せば、国道9号線という大動脈から外れたエリアに関しては、地元の人しか知り得ないスポットが存在するのでは、という疑念に行き着くことになる。
「ルイジアナママ」は、国道9号線から少し脇に逸れるだけで辿り着くことができるイタリアンの名店である。周辺はいたって普通の住宅街なだけに、初めて訪れた時は、そのロケーションに少々驚くことになる。お昼時は激戦区となっており、空席待ちの客が店の前にあぶれ出すが、それを待っても食べる価値はある。
メインはパスタとピザであることは言うまでもないが、とにかく量が多く、しっかりとした味付けが特徴。この店より美味いパスタを求め、ここここ なんかに食べに行った経験もあるが、どちらもこじゃれた雰囲気がウリなだけで、量も少ないし、味も薄い。舌が安もんと言われればそれまでの話かもしれないが、やはり「ルイジアナママ」のような分かりやすい美味しさが一番、というのが私の結論である。
この店のもう一つの大きな特徴が、ランチセットを頼むともれなく付いてくるサラダバーとドリンクバー。特にサラダバーはフライドポテトや茄子炒め等々、サラダという領域を超越した総菜王国となっており、メインディッシュが来る前に腹一杯!という本末転倒な結果になる危険性があるので要注意である。

ルイジアナママ
★★★★★ 4.5

担担

壬生近辺の四条通りというと、青々とした芝生がプチゴルフ場のような雰囲気を醸し出す「日写」 のイメージが強く、全体的になんとも寂れた、閑散としたエリアといったイメージがある。最近になって、いけない本屋さん「紅葉書店」 が出店と、悪の息吹も加わったことで、色んな意味で危険なゾーンに変化しつつある。そんなエリアで唯一孤軍奮闘する、行列のできる担々麺屋が「担担」である。
かつての私は担担麺について知見が浅く、新風館「萬力屋」 という店が初体験の場となるが、それがトラウマとなり、担担麺という食べ物に対する不信感は根強く残っていた。それはまるで幼い頃に陵辱された過去を持つ女性が、男性不信に陥るように……。
しかし、そんな積年の悩みに対して、新進気鋭の「担担」はあっさりと、そして爽やかにソリューションを提供してくれた。これは美味い。ゴマが磨り潰された粉っぽい濃厚スープに、細かく刻まれた具と細麺が粘りっこく絡み合う。ラーメンとはまたテンポが異なる、スロウで不器用な味が、私にとっては非常に新鮮であった。これからもしばらくは「担担」に通院し、担担麺リハビリに勤しむ所存である。

タンタンヌードゥルショップ 担担
★★★★ 4.0

恵文社一乗寺店

エンゲル係数高げな食いしん坊エリア・一乗寺にて、唯一文化的且つ芸術的アロマを発する、なんともけったいな本屋、それが「恵文社一乗寺店」である。
西大路駅の側にも系列店 が存在するが、こちらはいたって普通の本屋。「鳶が鷹を生む」ではないが、突然変異で誕生したのがこの一乗寺店 ということになる。
いい感じにアンティーク感が漂う店内は、その半分が雑貨屋及びギャラリーになっており、その道の人にはたまらない、好奇心くすぐり系のスペースとなっている。書籍のラインナップも、建築、デザイン、アート系が目を引く、通好みのセレクトとなっている。買うべき本が明確に決まっている前提で向かう本屋というよりは、なんとなく入ってみて、思いがけず素敵な本に出会ってしまう系の本屋、と言えるであろう。
開店当初からこの本屋に通い続けている私であるが、ふとしたことで興味を持ち、探していたヘンリー・ダーガー の作品集が、当たり前のように陳列されているのを発見したとき、改めてこの本屋の懐の深さを知った、という経験があったりする。いずれにせよ、満腹中枢を満たした後は「恵文社一乗寺店」で知的好奇心を満たして心身共に中和を計る、それが文化人的・一乗寺の歩き方である。

キッチンアベ

知る人ぞ知る、一乗寺の隠れたオアシス「キッチンアベ」。店内に入ると、その光景にまず圧倒される。夥しいほどの漫画が整然と並べられた本棚、金魚が優雅に泳ぐ水槽、そして、壁一面に貼られたメニューの紙切れ。AMラジオをBGMに、万物が渾然一体となったこの異空間の案内人は、ヘンゾ・グレイシー 似の無愛想なおばちゃんである。中華料理を標榜しつつも和洋中入り乱れる異種格闘技戦なメニューは実数が把握できない程に膨大で、中には「ぷるぷる定食」(茹でた豚肉をさっと炒めたもの)などとチャーミングなネーミングが目を引いたり。この店の白眉は「若鶏の唐揚げ定食」。世に少ない貴重なカリカリ系の唐揚げ。それに自家製の甘ダレがかかり、得も言われぬ旨味が炸裂!大食いの諸君には、必ずご飯は大盛りにしておくことをオススメしたい。この店は、夜は飲み屋としても機能しており、私もオヤジ世代になる頃には、お世話になろうかと今から思っていたりする。大将は結構年をとっておられるけれど、一子相伝、息子さんへの味の継承も水面下で行われているようで、「キッチンアベ」の将来はとりあえず安泰と言えるだろう。

キッチンアベ
★★★★★ 4.5

天天有

誰にでも永遠の定番はあるはず。私にとって、ラーメンの定番はやはり一乗寺の「天天有」である。学生の頃に一口食べた瞬間から一目惚れ。所謂背脂チャッチャ系の豚骨醤油ラーメンが京都で幅を効かせる中にあって、そこはかとなく甘く、優しい味の豚骨スープは、例えるなら「ドラクエ」 に対するアンチテーゼとして「MOTHER」 が存在するように、ラーメンジャンキー達を母性の味でもって包み込んでくれる。そんな「天天有」であるが、最近になって、カップラーメンの発売→値段の改正(割増)→メニューの増加(餃子・こってりラーメン等)→店内の大改装→四条烏丸「COCON烏丸」 への出店と、めまぐるしく変化し始めている。「COCON烏丸」の「天天有」 に至っては、基本ベースは一乗寺本店の味を踏襲しながらも、新しい味にチャレンジし始めており、いちファンとしては、なんとも複雑な心境である(店を切り盛りするやんちゃボーイズにもなんだか辟易)。でもまあ本店の味が変わらなければそれでいいんやけどね、と食べに行った本店の味が見事に変わっているではないか!嗚呼「天天有」よ……あんたはいったいどこに向かっていくんや!

天天有
★★★★★ 4.5

ソワレ

昭和の臭いを色濃く残した京都の名喫茶店・ソワレ。飲屋街・木屋町の雑踏の中で、よく注意しないと見逃してしまいそうなくらいに、こっそりと存在している。店内はアンティークな家具や絵が印象的。きょうびの所謂ぽっと出の「カフェ」とは違う、クラシカルな「喫茶店」としての重厚なアイデンティティーを醸し出している。この店の目玉である色とりどりのゼリーに、店内を照らす青い照明が屈折し、なんとも幻想的な世界……ていうか、けっこう腰が痛い。なんやこの病院の待合室に置かれているような素材の椅子は!奥行きも狭いし窮屈や!……夢見る乙女ならまだしも、ええ年こいたオッサンにとっては、昭和ロマンの妄想に浸るにも、それなりの根性がいるっちゅうことですな。

ソワレ
★★★★ 3.5

アジャンタ

寺町電気街の電波地獄をかいくぐり、高辻を通り過ぎると、怪しいお香の香りが辺り一面に漂い出す。この臭いをトレースしていくと辿り着くのが「アジャンタ」、インド料理屋である。
一見すると、どでかい国旗に暗い店内と、なんだか近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、中に入ってみるとこれまたビックリ、謎のインド人歌手が陽気にダンシン!なDVDがエンドレスで流されている…恐るべし!スタッフはオールインド人であるが、日本語ハダイジョウブソウデス。
一流シェフによるインド料理ということで、ランチセットでは、なんといってもでかいナンが目を引く。これを2種類のカレーにつけながら食べる形式であるが、プチご飯もついているお陰で、食べ終わる頃には、腹パンパン!価格もリーズナブルなので、育ち盛りのBoys&Girlsにお勧めしたい。ちなみにレジの前に置いてある割引券は、会計時に出すとソフトドリンクが無料になる。しかも、次来たときにもまた使えてしまう。粋なインド料理屋である。

アジャンタ (AJANTA)
★★★★ 4.0

高安

いまのところ、京都ラーメンを牽引しているのは「杉千代」 「東龍」 「高安」の3店、これが私の見解。他にも老舗の名店はあれど、若い、勢いがある、美味い、といえばやはりこの3店やなかろうか。
なかでも一番のお気に入りが「高安」。ラーメン激戦区の一乗寺にて、後発部隊として東大路の裏通りという一歩引いた立地に出店したにも関わらず、連日連夜の行列である。
スープが絶品で、鶏ガラから抽出されたトロっとしたグルタミン酸の旨味が炸裂する豚骨系の白濁スープ。かといって、「天下一品」 のようなドロドロさ・しつこさはない。数量限定と銘打ったスジラーメンが目玉で、トロトロに煮込まれた牛スジ肉が、チャーシュー麺という踊り場で逡巡していたラーメン界に一石を投じる。
店長の奥さんの趣味か、店内のオブジェのファンシーさ加減の進行に、若干の危機感を禁じ得ないが、京都で欠かすことのできない名店であることに間違いはない。

中華そば 高安 (たかやす)
★★★★★ 5.0

龍園

私が幼い頃から、我が家では「龍園」の餃子がご馳走だった。もっちりとしている餃子に、秘伝の味噌だれをベトベトに付けて食べる。にんにく臭がなく、淡泊な味なので、何杯でもご飯をお替わりできる。
先代が亡くなられて、いまは女手だけで店を切り盛りされている。昔も今も、無愛想なのは一緒。飾らない、殺風景な店内。でもこれでいいんだ。ピンと張りつめた空気のなかで、ただひたすらに餃子をかき込む客の姿。
大人になって、自分のお金で食べに行けるようになったのは、とても贅沢な気分だけど、何故だかちょっぴり寂しい気持ちになったりする。静かな住宅街の中で、今日もひっそりと餃子を作り続ける「龍園」。京都人として日常使いの「王将」 もいいけど、プチ贅沢をしたいときに外せない。

龍園
★★★★★ 5.0

海望亭

「海鮮モノを食べたい」というパッションの赴くままに、162号線を北上すること数時間、行き着いた先は舞鶴だった……。早速、目に入った洋服屋に突入し、おばちゃんに聞き込み開始!「あっちの通りに食べ物屋が多いでえ」。この情報を元に辿り着いたのが「海望亭」!その名の通り海岸に面しており、それはもう絶景……のはずが、既に夜やし!しかも、あいにくの曇り空のせいもあり、見渡す限り真っ暗ですから、残念!
注文は¥2,500(!)のコースにしてみた。前菜、刺身、天麩羅、寿司と順番に出てくるが、どれも「う~ん」な感じ……。量も少ないし、特別新鮮さも感じない……。敗北感を感じつつ、帰途でこじんまりとした、よさげな店 を幾つか発見。こいつは要リベンジですぜ……。
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