フジヤマプリン | 京都1975

フジヤマプリン


甘いもんと辛いもん。甘いもんを食べたあとは辛いもんが食べたくなり、辛いもんを食べたあとは甘いもんが食べたくなる。この、ヒトとしてプリミティブに持つ嗜好を、ひとつの店で完結させてくれるカレー屋さん「フジヤマプリン」。店名に「プリン」と銘打っておきながら、その実、主役はカレーというトリッキーなセンスがなかなか素敵。「大学翻訳センター」のくせに化粧品や健康食品を売っているDHCと手法が酷似している(いや違う)。ひっきりなしに車が往来する片側一車線の天神川通りに面する微妙なロケーションながら、春には一変、桜並木と化する天神川を眺めながらの食事は趣があっていいかも……などと想像してみたりする元・右京区民、ここにひとり。カレー臭(加齢臭)漂う店内は、チープな表現で済ますならば「ロハス」な雰囲気。ウッディーで明るくて清潔で、小物や雑貨類の配置にしても抜け目がなく、食器類のチョイスもいい感じ。地に足がついていない形骸で取って付けたような店作りではなく、さりげなく、でもしっかりと、筋が一本通っている絶妙なセンスでもって、決して大きくはない店内が満たされている。これはこじゃれている。店周辺の雰囲気との乖離こそが唯一のネックと言えるかも。肝心のカレーは、喫茶店のおばあちゃんから製法を引き継いだという伝説のカレーらしく、やや甘口な風味ながらもしみじみ美味い。フェミニンでこじゃれたボリュームなのが玉に瑕で、すっきり味のプリンを食して口の中のカレー臭が雲散霧消したあと、またもやカレーを食いたくなるという衝動。食いしん坊さんは予め大盛りを注文して、このスパイラルに陥らないよう、ご注意をば。

フジヤマプリン (カレーライス / 西京極)
★★★★ 4.0